「超高純度鉄」は日本発の素材になれるか?

2014年1月26日日曜日

コラム

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今まで知りませんでした。「鉄」にも色々あるなんて。
暇な日曜日、お台場をぶらぶらするついでに、日本科学未来館で「超高純度鉄」の講演を聞いてきました。予備知識は全くありませんでしたが、とても興味深い内容でした。


▼「超高純度鉄」とは


私達がいつも見る鉄には不純物が入っていて、「鉄」そのものの性質とは異なるのだそうです。講師の安彦氏は、一般的な高純度よりも100分の1も不純物の少ない99.9996%の超高純度鉄を開発しました。

この超高純度鉄は「一般的な鉄」と違い、錆びない、酸に強い、叩いても割れない強靭さを持っています。私達が学校で勉強してきたのは「一般的な鉄」であって、塩酸に入れれば溶けますよね?超高純度鉄は塩酸に入れてもほとんど溶けません。学術的に鉄を議論する際の、常識を覆す物なのです。

超高純度を定義するためには、鉄以外の元素がどれくらい含まれているかを調べます。安彦氏が開発した鉄は64元素が含まれていないと証明されています。よく高純度と言われるシリコン(半導体に使われる素材)は、30元素ぐらいしか確認されておらず、酸素などの元素が多く含まれているそうです。

超高純度鉄は「割れない」という特徴があるため、非常に加工がしやく、また錆びないので、鉄の寿命が飛躍的に伸びると考えられます。温度特性にも優れ、原発などの過酷な場所で使うことも検討されているそうです。


▼日本における超高純度鉄


安彦氏がしきりに言っていたのは、新技術に対する日本の反応の遅さでした。学会に発表しても、「錆びない鉄なんてあるわけない」「不純物と特性の関連も分からないのに、超高純度の論文なんて認められない」と、突き返されてしまったそうです。そこで、ドイツや米国に持って行くとすぐに受け入れられ、ドイツが主催する「国際標準物質データベース」に認定されました。

未だに国内での実用化の目処は立っておらず、国からの研究費で賄っている状況ですが、自民党政権に変わったことで予算が無くなり、製造施設が撤去されてしまったのだとか。

人類史で鉄はかなり古くからあり、超高純度鉄のような今までの常識を覆す素材をなかなか信じてもらえないのが現状だそうです。身近な素材すぎて「灯台もと暗し」という感じでしょうか。

安彦氏は元東北大の客員教授を勤められた経験をお持ちで、東日本大震災の被災地から日本発の技術が生まれれば良いのに!と強く思いました。


▼参考文献

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